スタッフの声Voice of staff

テーマ「感謝の気持ちをもつ」

  • 2022.12.9  
  • 所属:
    仁誠会クリニック大津 技士部
    職種・資格:
    臨床工学技士
    名前:
    A. S
  • 仁誠会フィロソフィー論文

-2022年 仁誠会フィロソフィー論文 最優秀賞―

 

今回は私が経験したとても辛く、でもとてもよかったと思えたことを振り返り、支えてくれた方達へ感謝の気持ちと今の思いを論文にしたいと思う。

人生は何が起こるか本当にわからない。それは誰もがわかっているようで実はわかっていないことだと思う。私自身もある事をきっかけに実感させられた。

最近、私はとても辛い事を経験した。自分の人生でこれほどの事があっただろうかと思うほど辛く、耐え難いことだった。もちろん落ち込みもしたし、元気もでなかったがそれでも早く元の自分に戻りたくて一生懸命働き、日々を楽しく過ごそうと頑張った。

その結果気が付いたら何も出来なくなっていた。
出来ないというのは少し違うかもしれない。ご飯を食べる、寝る、起きる、という普通のことを別にやらなくてもいいやと考えるようになったのだ。
そんな毎日を過ごしていた時、最初に異変に気付いたのはいつも傍にいる妹、そして胃痛という形で自分の身体が訴えてきた。

科長が話を聞いてくれて、周りの方達も休職を勧めてくれた。とても温かい言葉で皆私を心配してくれた。本当にありがたいと思った。でも、その時から「私はとうとう働くこともできなくなったのか」と落ち込んでいく。

始めは本当に辛かった。毎日家にいて何もやる気が起きない、眠くもない、動きたくもない、お腹もすかない。そして自分の弱さに絶望し、ずっとこのままなのかという不安と戦っていた。
辛い日々を送る中、電話で事務長から「この休みは自分へのご褒美と思ってゆっくり休むように」と言われた。その一言が心に響いて、その一瞬でスッと気持ちが楽になった。今思い返しても不思議なほど一瞬で気持ちが変化したのを覚えている。

気持ちが楽になり心に余裕がでてくると自分の周りにいる沢山の支えてくれる人達の存在に気づいていく。
毎日たわいもない会話をしてくれる人がいて、癒してくれる存在がいて、無理しないでと気にかけてくれる人がいる。みんなが何もしなくても大丈夫、できなくても大丈夫だということを教えてくれた気がした。
「いつかこんなこともあったねと笑って話そうね」と言ってくれた人もいる。固まった心が溶けていくような感じがして救われた。沢山の人達のおかげで少しずつ元の自分に戻っていると実感できた。

休職、リハビリを経て、無事に復職することができた今、毎日働きながら自分の考え方や思いの変化を実感している。
仕事に来ることは普通のこと、患者さんが治療に来ることも普通のこと、仕事仲間が居ることも普通のこと。毎日当たり前に感じていたことがそうではないと分かった時、毎日出勤することの凄さ、治療を終えてまた来院する患者さんの強さ、一緒に働いてくれる仲間の大切さをより感じるようになった。
決して今までなにも感じていなかったわけではない。ただ当たり前の日常になっていたのだと思う。

復職してすぐ、ある患者さんが、同じように透析をしているお兄さんを亡くした寂しさを話してくれた。お兄さんを亡くした悲しみと自分もいつかという不安を感じると言っていた。その患者さんの辛い気持ちが痛いほど伝わり、涙がでた。気持ちが溢れてきたのだと思う。何も言ってあげることはできなかったが一緒に泣いてくれて嬉しかったと言ってもらえた。

今、私は病気に不安を感じる患者さんの気持ち、大切な人を思うその家族の思いをより理解してあげられる立場にいると思う。それは自分自身も一緒に泣いてくれた人がいてくれて、話を聞いてくれた人がいてくれてたくさん救われたから、同じような経験をしたからだろう。「患者さんの痛みや苦しみを今まで以上に感じることができる。」と、自分にできることが増えたような気がして嬉しくなった。

フィロソフィにある「決して一人でここまで来られたわけではない」という一文。
今までの自分は本当に理解できていたのだろうか。家族との毎日の会話、友人との連絡、美味しいものを食べる、テレビを見て笑う、この日常は決して当たり前ではないと分かり、今自分に関わる全てのことに感謝したいと強く思う。そして私を支えてくれた皆はもちろん、この状況を乗り越えた自分自身、大好きな家族に感謝する。本当にありがとう。

最後の面談の時に「より人の辛い気持ちを理解できるようになったと思う。よい経験をした。」と言ってもらえた。この言葉の通り、この経験は必ず私をもっと成長させてくれると信じ、これからの一日一日を大切に過ごしていきたい。そして普通の毎日を送ることが出来るということがすばらしい事であり、尊いことであるということを普段の業務の中でたくさんの人たちに伝えていこうと思う。